2014年5月27日火曜日

リラ  ルイ・アラゴン

(田中淳一訳)

 ぼくは夢みる ぼくはめざめる
 リラの花の匂いのなかで
 眠りのどちらがわに
 ぼくはきみを残してきたのかな

 ぼくはきみの記憶のなかに眠っていた
 そしてきみはひっそりとぼくを忘れていった
 それとも話はさかさまで
 ぼくはきみのいないところにいたのかしら

 ぼくはまた眠りこむ きみが夢に想った
 その国できみに追いつこうと
 そこではすべてが身をかわすばかり
 きみはもう立去ってしまった

 暮らしのなかでも夢のなかでも
 すべてがこの奇妙な輝きをはなつ
 いつまでも続く香りのように
 飛び去った唄のように

 おお明るい夜 くらい昼
 ここにいない女ひとを腕に抱き
 ぼくのなかで生き永らえているものとては
きみが囁いたことばかり

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